ビルの雨漏りとロープアクセス

ビル管理において、「雨漏り」は決して珍しいトラブルではありません。
むしろ、築年数を重ねた建物であればあるほど、そのリスクは高まります。特に外壁や屋上、防水層、シーリングの劣化は、目に見えにくい形で進行し、ある日突然、天井の染みや壁の変色として顕在化します。そして近年、この雨漏り対策の現場で注目を集めているのが「ロープアクセス」という工法です。

従来、高層ビルの外壁調査や補修工事といえば、足場の設置やゴンドラの使用が一般的でした。大手ゼネコンが手がける大規模修繕工事では、建物全体を囲う大掛かりな足場が組まれる光景も珍しくありません。しかし、部分的な雨漏り補修やピンポイントの外壁調査においては、そのためのコストや工期が大きな負担となる場合があります。
そこで登場するのがロープアクセス(無足場工法)です。これは、作業員が専用のロープと安全装備を用いて高所に直接アクセスし、外壁面で作業を行う技術です。もともとはヨーロッパの産業用高所作業の現場で発展し、日本でもここ十数年で急速に普及しました。足場を組まないため、設置・解体の時間が不要であり、狭小地や交通量の多い都市部でも柔軟に対応できる点が大きなメリットです。
雨漏りの原因は多岐にわたります。
【外壁のひび割れ】

【シーリング材の劣化】

【タイルクラックからの侵入】

屋上防水層の破断など、症状と原因が一致しないケースも少なくありません。たとえば、最上階の天井に水が落ちてきたとしても、実際の浸入口は数メートル離れた外壁クラックであることもあります。こうした場合、建物全体を目視で細かく確認することが不可欠です。

ロープアクセスは、この「広範囲かつ詳細な調査」を効率よく実現します。作業員が外壁面を上下左右に移動しながら、打診や目視、場合によっては散水試験を行うことで、雨水の侵入経路を特定します。必要に応じてその場でシーリングの打ち替えやクラック補修を実施できるため、調査から応急処置までを一連で完結できるのも特徴です。
さらに、ビルオーナーにとって大きな利点はコストの最適化です。足場工事は規模にもよりますが数百万円単位になることもあります。一方、ロープアクセスは作業範囲が限定的であれば、その数分の一で済む場合もあります。もちろん、全面改修のような大規模工事には足場が適しているケースもありますが、雨漏りの「点」の問題に対しては、ロープアクセスは非常に合理的な選択肢といえるでしょう。
安全性についても、国際的な基準や国内の安全講習制度が整備されており、専門技術者による二重三重のバックアップ体制が取られています。作業員は常に二本以上のロープで確保され、地上には監視員が配置されます。高度な技術と厳格な安全管理のもとで行われるため、適切な業者を選定すればリスクは十分に管理可能です。

都市の景観という観点でも、ロープアクセスは優れています。足場や防音シートで建物全体を覆うことなく、必要最小限の範囲で作業ができるため、テナント営業への影響も抑えられます。商業ビルやオフィスビルでは、工事期間中の営業継続が収益に直結するため、この点は見逃せません。

気候変動の影響により、集中豪雨や台風の大型化が進む現代において、ビルの防水性能はますます重要になっています。わずかな劣化が大きな漏水事故へと発展し、内装や設備に深刻な被害を及ぼすこともあります。早期発見・早期対応こそが、建物の資産価値を守る最大の鍵です。
ロープアクセスは単なる「コスト削減手段」ではなく、建物維持管理の新しい発想を象徴する技術といえるでしょう。必要な箇所に、必要な人材が、必要な時間だけアクセスする。その機動力は、これからの都市型ビル管理において欠かせない存在になるはずです。
雨漏りは放置すればするほど被害が拡大します。しかし、適切な調査と的確な補修を行えば、被害は最小限に抑えられます。ビルオーナーや管理者にとって、ロープアクセスという選択肢を知っておくことは、これからの時代におけるリスクマネジメントの一環といえるのではないでしょうか。
大規模修繕においてもデリアズ式バルーン工法を駆使することによってロープアクセスがより活躍するのですが、その話はまた今度!

デリアズプラン株式会社
建部